下心クーリングオフ
おはようございます絵に描いたようなクズです。
何か甘酸っぱい季節ですね。
今日は遠い昔の話をしようと思います。
まだ僕がお猿さんだった遠い昔の話です。
童貞。
それは男にとって拭いきれないコンプレックス
女性経験が無い。モテない。
これらは、一生を通して男児にまとわりついてくる。
かく言う自分も、当時童貞をこじらせ続け19年。
魔法使い見習いに突入しようとした時のことである。
地元を離れ、大都会に上京し一人暮らしにも慣れ始めた頃だった。
東京が凄かったというよりも、社会に出ざるを得ない状況で、地元じゃ女のおの字も出なかった自分に興味を持った稀有な女性と出会った。
何かとからかわれ、悪戯に好意を伝えてくる適当な女性に半ば苛立ちながら
「悪い冗談ばっかり言ってると、家に行って襲いますよ!」
と下心半分で感情をぶつけた。
すると件の女は微笑みながら
「やれるもんならやってみな」
そう挑発するのである。
あの時の自分の表情と来たら…
眉間に皺を寄せながら鼻の下を伸ばし、息を荒げて日付設定する目の前の男を女はどう思っていたか知る由もないが。
日を跨ぎ、決戦の日。
連絡は取り続けた。
感触も悪くはない。
禁欲も続いている。
またとない脱童貞日和。
今日を逃せば、俺はきっと生涯童貞だろう。
そう意気込み、彼女の最寄り駅から一番近い童キホー貞でスウェットとコンドームを買った。
女性店員に会計をされる時の羞恥心は今でも忘れられない。
背伸びして紙袋を断った自分を今でもよく覚えている。
準備は整った…
相手の仕事が終わり突然連絡が入る。
「ごめん、やっぱりお互いのことをよく知らないし…君とはそういうことできない」
心の何処かで仙道の声が聞こえた。
当時の絵に描いたようなクズ青年は慎重に連絡を取り続けた。
慎重に…慎重に…嫌われないように。
ここを逃したら次はない。
周りはよく言ってきた。
ハーフだから大丈夫だよ!
その内彼女出来るって!
お前らのモテ期はいつだよ!!
断固たる決意
断固クズ
………………………
とても健闘と言えるものじゃないが、一人の青年の童貞卒業をかけた戦いは終わった。
黄色い袋を引っさげ、元来た店へ戻る。
ショックで憔悴しきり、せめてお金だけでもと返品を試みた。
「商品の返品理由をお聞かせ願いますか?」
「必要が…なくなったからです」
お姉さん…そんな顔で見ないでくれ。
避妊する相手がいなくなっただけさ。
なんならピルの存在も知らなかったよ。
返品ついでにお姉さん買っていいですか。
手元に帰ってくるお金。
家路に着き、平静を取り戻したくて生まれて初めて家計簿を付けた。
所持金9841円
そこで当時の家計簿は止まっている。
その日の夜、東京に一人の青年の涙が流れた。
声を押し殺し、悔し抜き。
近隣には青年がすすり抜く音が聞こえたという…
出展 童貞問答 第2手より